特集 東北復興木づかいプロジェクト「タコマツの木づな」
  製作担当者になれなかった私の思い
文/ 細井康晴
   
 
 
  (株)サンテックは栃木県鹿沼市にあるスチール家具製造工場です。2011年3月11日の震災時、かなり揺れはしましたが幸い工場が大きな被害を受けることはありませんでした。その後、東北地方を襲った被害の激しさを目の当たりにし、仙台に送るための物資を買い集めたり、当社で人員を受け入れることを考えたりしながら、とにかく何かできないかを考えていました。そんなときにこの企画の話を聞き、メンバーとして入れてもらったわけです。
   
  内田洋行のテクニカルデザインセンターにいたころにできた林野庁さんとのつながりや、奥羽木工所の芳賀専務とのつながりもあり、なんとかサンテックとしても金具関係の製造などで協力して、少しでも力になれないかと思いました。以前から杉ベンチの脚金物なども作っており、当社設計の杉浦(この1月からマレーシアの関連工場勤務となってますが、サンテックの有能な開発スタッフです)ともいろいろ相談して進めました。
   
  しかし、「やりたいこと」と「できること」のギャップという、永遠のテーマがあります。
   
  打ち合わせを重ねていくと、当社での金物製造が製品コストを押し上げてしまうことがわかってきました。メンバーの皆さんは決して口には出しませんでしたが、本来やりたいことを考えたら当社で作ることにこだわっていてはだめだと思いました。本当に残念ではありましたが、今回はサンテックでの製造は諦めることをお話しして了承いただきました。そういうわけで、金物製造はサンテックではございません。悪しからずご了承下さい。
   
  私はヒッチコック映画の主人公のように、わけも分からず物事に巻き込まれる傾向があるようです。いやいや、それはただぼーっとしてるからだとか、何も考えてないからだとか、いろんなご意見もございましょうが、何かに巻き込まれたときに、抗うことなく身を任せる傾向は確かにあると思ってます。
   
  今回タコマツプロジェクトに巻き込まれたことで、「当社でできないこと」が分かりました。当然それができる会社もあるわけで、そこに当社の力の限界があります。限界がわかればそれを乗り越えようという気持ちが出ます。これに懲りることなくいろいろなチャレンジは続けていきたいと考えています。もしあいつを巻き込んでやろうとお考えの方がいらっしゃったら、一つお声がけ下さい。ただ、やや耳が遠いため、ちょっと大きめの声でお願い致します。
   
 
   
  若杉浩一さんの連載「スギダラな一生」で細井康晴さんに寄せた文章を書いています。二人は同じデザインチームに所属し、細井さんはデザインセンター長、若杉さんの上司でした。細井さんが現在のサンテック社長としてチームを離れることになった際、若杉さんが細井さんに寄せて書いた文章です。こちらも合わせてご覧ください。(月刊杉編集部)
スギダラな一生/第34笑 「い〜ほその ちょうぶ〜」
   
   
   
   
   
   
  ●<ほそい・やすはる> 株式会社サンテック 代表取締役社長
サンテックは内田洋行のグループ企業で、スチール家具メーカー。主に折りたたみテーブルやロッカーを製造している。
実家は新潟の旅館「末廣館」。
サンテック: http://www.suntech-k.com/
末廣館: http://www.suehirokan.com/
   
 
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