特集 天草高浜フィールドワーク2013
  思いを伝える力・受ける力
文/写真 大坪和朗
     
 
 
  藤原様を始め関係者の皆様ありがとうございました!
参加した皆さんと一緒にすごす濃密な2泊3日のワークショップは、知的な旅として私の脳裏に焼きついています。
   
  まず訪れて印象に残ったことは、例に漏れず天草の海・風景です。こういう風景が日本に有るのだなあという感動。そして天草の人々、集まった人々の想い・楽しさです。風景に出会い、最終的にその地(風景)に人を繋ぎ止めるのは「人」なのかもしれないなあと感じた次第です。またお会いする日を楽しみにしています!!
   
  文章の下手な私があまり長く書いてもみにくい文章になってしまいますので、的を絞ってお伝えしたいと思います。
   
 
   
  ● 似た思いを持つ人々が、様々な世代・分野から集まったことの可能性
   
  私はまず、同じような思いをもった人々が、世代・職種・専門・国境を越えて集まっていることに、とても可能性を感じました。また、大学・学生・企業が参加することで、継続力・若さ・瞬発力・実践力が有効に働くかもしれないと思ったのです。しかもみな熱い。部活のような一体感。こんなことは、そうそう無いのではないだろうか? と思うのです。藤原さんというこの地に惚れ込んだ方がいて、こんな楽しい人々が続々と集まってきているこの地域は、なんて幸せ者なのだろうか。何か大事なことが始まる切っ掛けがつかめるのではないか、突破できるのではないか、そういう期待感・可能性を感じずにはいられませんでした。
   
  しかし、外の人々がどんなに期待感を持っていても、そう思われるとは限らないということも今回垣間見ることができました。
   
  しかしそれでも、よそ者の思いは伝え続ける必要があるのでしょう。日本の良さを、遠い外国で知らされるように、日本人よりも日本のことに興味を持っている外国人がいるように、よそ者が伝えた地域の魅力を、地域の人々は感じ取ることができるはず。それをどう受け取り、どう形にするかは、月並みながら、地域の人々の「気持ち」にかかっていると思うのです。
   
  しかし・・・そう思う一方で、そこにはもう元気な若者や、脂の乗った40、50代が絶対的に少ないという現実がある。この構造的な地域衰退の形から抜け出すには、既存の構造を一部再構築するような取り組みが必要なのかもしれませんが、まずこの、「思いの結集」がなければ、「知の結集」も持続しないのかもしれない、と思い至ります。そういう意味で、ここに集まったこれだけの人々が放つエネルギーは、素直にすばらしいことだと思うのです。
この可能性を活かさない手は無い。そう思うのです。
   
 
   
  ● 思いを伝えるプレゼン力
   
  それを私は個人的に、「新しい!」と感じています。先ほど書いた「思いの結集」に重点を置いたプレゼン。
   
  私自身は建築を専門としているためか、ワークショップでは実務的なプレゼンをしてしまいましたが、スギダラの同じチームの仲間から2回ほど、こうコメントを頂きました「大坪さん実務的ですよね!」「ん?? もちろん!(いや普通に・・・それ以外考えられない)」笑。しかし、デザインを専門にしているスギダラの皆さんのプレゼンは面白い! 私たち建築とは全く性格が異なるプレゼンでした。
   
  「思いを伝えるプレゼン」とでもいいますか、そういうプレゼンが有るのか〜!!! という開眼です。つまり、私なりにわかりやすく説明するとすれば「俺たち愛してるぜっ!!!」というプレゼンです。人は愛され期待されて自信をつけ、自ら積極的に動き出すようになると言われますが、それを力づけ促すようなプレゼンがあるのかという衝撃です。プレゼン時の高揚感たるや半端ではない。この初めて見るプレゼンの可能性。これは根源的であり無限の可能性を秘めている(?)と感じてしまいました。
   
  「こいつは新しい祭りかもしれない!」と心の中でつぶやいたのは私だけかもしれませんが、 日本全国スギダラ祭り・・・可能性は未知数無限大ではないでしょうか!
   
 
   
  ● 思いを受けて応える力
   
  この摩訶不思議なパワー(愛)を秘めたプレゼンを受けた人々は、その場の反応は「ウォ〜!」という雄叫びで良いとして、日常の中でどう応えていけばよいのだろうか。と考えてみる。こういう「仲間達が共に居る」ということを心に留め、思い出しながら、淡々と、たゆまぬ努力で前進していくことかもしれない。その姿を、都会に居る息子や娘たちは見ているはずなのです。きっと。
   
  どちらが先だということではなく、お互いの気持ちがお互いを引き付けるのだと思うのです。また都市と田舎、どちらにも無いものがあり、お互い無いものを必要としています。どちらが欠けても成し遂げられないのではないかとさえ思うのです。どちらともなく歩み寄って欲しいと思います。
   
 
   
  最後に、繰り返しになりますが、ここに結集した人々の思いは、得がたいものだと思います。これを、ひとつの形に結晶させる前に終わりになるとしたらとってもモッタイナイ(泣) 全国から身銭を切って集まった私たちの期待に応えるためにも、是非継続して頂き、地域の産業として新たなスタートを切って頂きたいと思います!!
   
  そして、今はまだよそ者な私も、地域に馴染んで必要とされれば、これ以上の幸せはありません。もしそうでなければ、また次の地で「よそ者っぷり」を発揮するしか道は無い(?)のでしょう。悲しいかな、これは現代の都市に生きる青年・壮年の共通な現象と考えられるのです。
   
  これからの時代、都市と田舎の密なコラボレーションが必要とされているのだと思うのです。
   
   
 
  バスの車窓から、初めて見る風景
 
  トランセクトウォークでの濃い緑と青い空
 
  夕日の中で泳いだ海と空
 
  皆で眺めた堤防からの夕日
 
  ワークショップ「まちなか再生+旧役場跡地の広場活用」グループの視察風景。
 
  演奏会風景。皆楽しそう
   
   
   
   
   
   
  ●<おおつぼ・かずろう> 建築家
風景を思うことがライフワークであり仕事でもある。
建築「絶景」事務所とでも言ってみると楽しい。
専門は建築や環境の絶景(設計)。

大坪和朗建築設計事務所HP:http://www.otsubo-archi.com/
Blog:http://otsubo-archi.cocolog-nifty.com/
月刊杉web単行本『住宅のアプローチ・構えの風景との関わり』:
http://m-sugi.com/books/books_otsubo.htm
   
 
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