連載

 

スギダラな人びと探訪

文/写真 千代田健一
杉を愛してやまない人びとを、日本各地に訪ねます。どんな杉好きが待ち受けているでしょう。
 
 日本全国スギダラケ倶楽部は2004年6月1日に発足し、以来様々な活動を通して、現在170名を超える会員を擁する倶楽部に発展してきました。
 スギダラ倶楽部の活動の中心は主にWEB上のスギダラホームページ(http://sugidara.jp)にあり、いわゆるバーチャルコミュニティなのですが、実はバーチャルな活動よりも時折行っているリアルな場での活動を通して杉に関心を持つ人々との繋がりを築いてきました。杉の産地を訪問したり、大学や専門学校での授業で杉をテーマにした課題をやったり、デザインの展示会に杉でつくった家具や屋台を展示したりする中で、ダイレクトに杉の魅力や杉が社会的に抱えている諸問題を伝えてきました。その結果、それらのイベントごとに飛躍的に会員数を伸ばしてゆき、ネットワークの幅も広がって行っております。
 では、実際どういった人々が集まっているのだろう?実はこの辺は不透明な部分が多く、スギダラホームページのBBSの常連さんでも全体像がわからない状態になっています。昨今の個人情報保護の問題等を鑑みると 安易に情報を公開するわけにも行かず、活動の一部をイベントレポートの形を取り、スギダラホームページの一コンテンツとして、「スギダラ家の人々」でご紹介してきました。

 WEB上の「スギダラ家の人々」が「活動」にフォーカスしたものであるのに対し、この月刊「杉」ではそこに集う「人」にフォーカスしてスギダラな人々の人物像、どういう活動をやっているのかを知っていただきたいと思います。ここでご紹介するスギダラな人々に直接会ってみたい、相談に乗って欲しい等、ご要望がございましたら、月刊「杉」編集部までご連絡ください。

 で、最終的にはスギダラな人々マップチャートのようなものにして行けたら、なんてことも考えています。「あんたもスギねー、スギダラ曼荼羅」です。これぞまさしくスギダラ!

 という訳で、第1回は企画内容の解説になってしまいましたが、手始めにまずごく最近知り合ったスギダラな人、静岡県の山口好則さん(会員番号125番)をご紹介いたします。

山口さんを囲んで記念撮影。発作的に山口さんを襲撃した若杉、千代田のスギダラ兄弟。

 山口さんは名門天竜杉の産地に近い、静岡県浜松市の丸八製材所(http://www.08seizai.co.jp/main.html)にお勤めの製材業に従事されている方です。丸八製材所が面白いのはホームページを見ていただいてもわかるように、植林から家づくりまで一貫して行っているというところです。もちろん材料の中心は天竜杉です。天竜川流域の山林は日本の三大美林のひとつであり、その中に自社林を持って杉を育てるところからやっているところがすごいんです。実はとあるきっかけで同浜松市にキャンパスがある某大学の研究室に杉を使った実験空間を作ろう、という話が持ち上がり、それだったらやはり天竜杉を使うしかない!と思い立ち、山口さんにコンタクトを取ったというのが実際にお会いするきっかけでした。

 その大学に訪問する前日、しかも夜中に思い立ったように山口さんにメールして、「明日そっちに行きますから、お会いできないでしょうか?」と。
山口さんが私からの発作のようなメールを受け取ったのは当日の朝で、「いやー、びっくりしましたよー!」と驚きながらも快く迎えていただきました。
突然の訪問にも関わらず、丸八製材所のショールームをご案内いただいたり、今回の杉プロジェクトに関するお話を聞いていただいたり、短時間ではありましたが、杉が取り持つ絆を深めることに成功いたしました。
結果、某大学の件ではご協力いただけることになり素敵な杉空間ができあがる予定になってますので、その詳細についても別途レポートさせていただきたいと思います。
  山口さんは製材業に従事する立場というよりは、杉に関わる一個人としてスギダラの活動に参加していただいています。山口さん曰く、「スギダラへの参加は仕事とは切り離してプライベートで単純に楽しむことができればと思い参加しました。また自分のやっている仕事を見つめなおす意味でも有効かと思いましたし、仕事以外で色々な方たちと知り合いになれればいいかなと思って。」と、言うことです。

 いつも思うのはスギダラの活動で出会う人は、今回のような突然の訪問、社会人としてはちょっと常識外してるんじゃないかと思える行為に対してもどこか寛容で、温かく迎えてくれる人々ばかりです。山口さんも気さくで大らか、杉に対して熱い思いを持っている素敵な人なのでした。とても初めてお会いするって感じではない、互いに距離感を縮め合えるそんな出会いでした。

 おまけがあって、慌しく山口さんを訪問した後に大学に向かうことになっていたのですが、ご親切にも車で送っていただきました。何から何までありがとうございました。この場を借りて御礼申し上げます。
スギダラな出会いは必然だ!

 追伸 実はその日訪問した大学でも素敵なスギダラな出会いがありました。いずれまとめてご紹介いたします。

 

●<ちよだ・けんいち>インハウス・プロダクトデザイナー
株式会社内田洋行 テクニカルデザインセンター所属。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部広報宣伝部長

山口さんに丸八製材所の取り組みを聞く。ショールームの床壁天井、家具に至るまで天竜杉で作ってある。丸八製材所さんの提唱する杉を使った家づくりは全てスギダラケではなく、要所要所にうまく杉を使った品の良いデザインである。
   
  Copyright(C) 2005 Gekkan sugi All Rights Reserved