続いては、これも必要不可欠な「木材の等級」についてお話をしたいと思います。
木材の等級は価格設定の根拠になるのですが、これが結構複雑でややこしいのです。と言うのも、産地やメーカー、流通の段階によって多少ニュアンスが異なる場合があり、また時代によってもニュアンスが変わってきたようです。
また、日本農林規格(JAS)という統一規格があり、節の大きさが断面寸法の何%以内に収まっているか、また年輪幅が何ミリ以下であるかで、1級・2級・3級と区別されていますが、等級の概念としては一般市場ではあまり浸透しておらず、取引の際には用いられる事は少ないようです。
取引の際に用いられている等級とはどんなものかを早速探ってみましょう。
木材の等級設定のキーワードは、皆さんもご存知かもしれませんが「節」です。
節の有無、節の状態、節の大小が等級に大きな影響を与えます。人間の美的感覚で等級が決定されるわけです。つまり節が少なく、節が小さい方が高価というわけです。〈写真3、4〉
ですが、この「節」の問題を考える前に、もっと大きな概念があります。
大きな等級として、特等材、一等材、二等材に分けられるのです。
特等材とは丸みのない均角の材、一等材とは少し丸みのある材、二等材とは大半が丸みの材という事です。正確に言うと「でした(過去形)」です。
一昔前(と言っても平成に入る直前の20年くらい前)までは、木材の需要が多く、丸みのある材でも売れていたそうです。現在では丸みのある材などは見向きもされません。一等材、二等材という言葉はもう死語になりました。
ですが、考えてみると丸みのある材でも工夫して使い、山林資源を無駄なく有効に活用していたとも言えます。今の木材業界では信じられないような時代だったのです。
等級の話はさらに深く入っていきます。
現在では「特等」という等級がほとんどであると書きましたが、それは形状の問題の話であって、化粧面(いわゆる見える面)の問題は考えていません。木材の等級にとっては化粧面が最も重要になってきます。
化粧面とは見える面の事です。柱であれば壁に隠れない面、桁・梁であれば下から見える三面、壁板であれば表面の部分がそれに当ります。〈写真6、7〉
等級は産地、メーカー、流通段階によってニュアンスが変わりますので、今回は弊社(吉野中央木材)の等級付けをベースにしながらお話をしたいと思います。
等級の基準となるのは、言わば我々人間の美的感覚のようなものが大きく影響します。つまり綺麗なもの、欠点の少ないものが最良とされるのです。
等級は高いものから順に「無節」「特選上小節」「上小節」「小節」「一等」とされます。
先ほど一等材は死語になったと書きましたが、この「一等」は特等材の中の一等、「特一等」と呼ばれるものです。なんかややこしいです。
特一等は丸みのない材なのですが、化粧面が綺麗ではなく、耐久性に問題のない程度の欠点があるという事で、壁に隠れる部分などの見えない場所に使われる事が多いです。
当然のことながら、特一等の材は見た目にはあまりよくありません。棟上げの時に見た目の悪い木材があると、お施主様などは心配になる事が多いそうです。ですので、最近では特一等でも見た目がマシなものを……というご注文が増えてきています。構造上の耐久性には全く問題はないのですが、気持ちは十分に理解できます。しかし、この流れが続くと一等材や二等材が消えていったように、ますます山林資源の有効活用からは遠のいてしまうのでは……心配になります。
また、特一等については、産地によるニュアンスの違いがあり、化粧材としても使える一等という意味で取られる所もあるようです。ややこしいです。
等級付けに大きな影響を与えるもの、それは「節」です。
等級の名前にも「節」という名称が入っている事からも分かります。
節は立ち木の時の枝の跡で、「生節(いきぶし)」、「死節(しにぶし)」、「抜節(ぬけぶし)」の3種類があります。生節はその名の通り、生きている節です。逆に死節は死んでいる節です。節に生死の関係があるのか?と疑問に思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、木と一体化しているか否かで節の生死が決まるのです。
節の状態を写真で説明致しましょう。〈 写真8、9
〉 節は欠点とされ、大きな節の特等材は一等材や二等材と同等の価値とされてきました。しかし最近では「節があった方が天然の良さ、面白さがある」や「コスト面で手軽に扱える無垢材」として逆に人気がある材になりました。化粧材でも使える一等ということで、「生節一等」や「化粧一等」と呼ばれる新たな等級を生み出したのです。「特一等」とは別に一等ができたわけです。さらにややこしくなってきました。
しかし、この生節一等は非常に難しい等級のような感じがします。
節には生節もあれば、死節もあります。生節は綺麗ですが、死節は見た目がよくありません。木は生き物ですので、生節だけで揃える事は不可能で、死節が混じってしまいます。また、節のある材というのは、言い換えれば手入れがあまり入っていない材とも言えます。つまり化粧面に節の他にも欠点が出る可能性が高いわけです。
一般的なイメージでは化粧用の一等という等級ですので、節の形が綺麗な木材と考えられがちですが、完全な生節の材というのは「無節」の材を作るよりも難しいです。 欠点として挙げられるのには、節の他にもいろいろあります。
木材の繊維が朽ちてしまう「クサリ」。これは耐久性にも問題が出るので、そういう材は製品にはなりません。〈写真10〉
虫が卵を産んだ跡の「虫穴」や、卵からかえった幼虫が外に出るために通った道筋跡の「ハチクイ」ですが、数量が少なく、大きくなければ、耐久性には問題はありません。(ある実験によると3%ほど耐久性が落ちるようです。)ですが、見た目が悪いため、化粧材としては用いられる事はありません。
〈写真11〉
カビを意味する「アオ」。これも嫌われます。
〈写真12〉
「アテ」というものもあります。
木は山の斜面に生えていますが、まっすぐ垂直に伸びていきます。しかし、斜面に対して垂直には伸びることはありません。角度を調整するために、根元の方で曲がるのです。この時、谷側に負担がかかり、冬目が大きくなってしまうのです。
木目は実は「夏目」と「冬目」の2種類あります。線として見える部分が「冬目」です。冬目と冬目の間が「夏目」と呼ばれます。名前のごとく、夏目は暖かい時に成長した部分。冬目は寒い時に成長した部分なのです。
「アテ」というものは、通常は線状の冬目が幅広く大きくなった状態を指します。谷側に負担がかかる為に起こりました。見た目にも美しいとは言えず、このアテがひどい場合には反りや曲がりが起きやすいので、製品にならない場合もあります。
〈写真13、14〉
このような欠点を勘案した上で等級が決められるのです。では等級付けを細かく見て行きたいと思います。
「無節」は節をはじめとした欠点がないのに加えて、木目が美しく、非の打ち所のない最高級品です。吉野杉の無節は和室の内装材として、一昔前は非常に珍重されました。ムジと略されることが多いです。
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