特集 第三回スギダラ全国大会 in 吉野
  吉野杉をハラオシしよう!/第72回
「スギダラの絆」
文/写真 石橋輝一
"駆け出し"専務の修行日記
 
  スギダラと吉野の出会いは、今から10年前、2004年の宮崎県での第1回杉コレクションで、スギナミキでグランプリを受賞された狩野新さんでした。
  狩野さんと吉野中央木材は、杉コレ以前からお付き合いがあり、スギナミキの現物を製作する際、狩野さんが吉野杉を使ったくれた事が、スギダラと吉野の今日までの繋がりの始まりでした。
  スギダラが初めて吉野を訪れてくれたのが、2005年3月の吉野ツアー。狩野さんと吉野中央木材が協力して、ツアーをコーディネートしました。このツアーをきっかけに月刊杉が生まれたのでした。この時、僕はまだ吉野にはいませんでした。
   
 

僕が吉野に戻ったのが、2005年11月。家業である製材業を継ぐためですが、当時は全く木の事が分かりませんでした。正直、杉と桧の見分けもつきませんでした。もちろん林業の抱える問題を知る由もありません。
しかし、木材業の置かれている状況を理解するまでに時間はかかりませんでした。木が売れない時代、山と街のつながりは今ほどなく、山が山だけで何とかしなければならないと、もがいているように感じました。
吉野に戻り、毎日、杉と桧の製材をしていると、木の面白さ、楽しさ、心地よさ、難しさ、奥深さを実感するようになりました。8年くらいの間、吉野を離れて、木のない世界で暮らしていた反動もあったのかもしれません。
ほどなくスギダラに入会し、2006年1月から、吉野の山行きの梶谷哲也さんからバトンを受ける形で、月刊杉での「吉野杉をハラオシしよう!」の連載が始まったのでした。

この連載では、吉野の製材所の仕事をできるだけ詳しくご紹介することを心掛けました。製材は丸を四角にするだけではない、ハラオシの技術を発信する事で、これまで日本人が築いてきた木と共に生きる文化、木を大切にする想い、木使いの素晴らしさに気付くきっかけになってほしいという想いがありました。
この月刊杉の連載から、たくさんのご縁をいただき、スギダラ関西に多くの仲間が集まりました。想いが伝わり、共有できること、そして、ご協力をいただけること、心から感謝しています。

   
 

スギダラと吉野が大きく動き出したのは、スギダラ関西の仲間の協力で開催できた2009年11月の吉野林業体感ツアーでした。吉野で初めての一般に向けたスギダライベントであり、スギダラ三兄弟の南雲勝志さんと千代田健一さんによる講演、パネルディスカッション、そして夜深くまで続いた宴会の中で、吉野にスギダラの風を吹かせてくれました。この時に生まれた名文句「やっ樽で〜!」は、今では吉野を象徴する掛け声となっています。
2010年からの吉野杉木桶復活プロジェクト、2012年の吉野材を使った暮らしの道具デザインコンペ、吉野貯木まちあるきでも、日本全国のスギダラメンバーの熱スギる応援を受けながら、取り組むことができました。

2012年の第二回スギダラ全国大会in秋田でも強く感じましたが、スギダラには、産地間でお互いを応援し合える仲間がたくさんいます。これは素晴らしいことで、今回の吉野にも全国から多くのスギダラメンバーに集まっていただきました。とても心強く、励まされました。本当にありがとうございました。
この夏、ついに吉野でも、スギダラファーニチャーが誕生します。パワープレイスの皆さんのご協力、藤森泰司さんのデザインで、地元の吉野中学校の新しい学習机が完成間近です。吉野の木とスチールを組み合わせた学習机です。天板は生徒本人専用のものになります。スギダラと吉野が出会って10年の節目に、ひとつのカタチが出来上がります。スギダラとの絆の中で生まれた学習机は、単なる家具ではなく、「愛・学習机プロジェクト」として、小学校の6年間の中で、林業・製材業・木工業などの地域産業を学び、中学校で使う学習机を、地域と共につくることを大きな目標としています。

   
 

スギダラと吉野。
次の10年もヨロスギお願いします!

   
 
  第三回吉野貯木まちあるき
   
   
   
  ●<いしばし・てるいち> 吉野杉・吉野桧の製造加工販売「吉野中央木材」3代目(いちおう専務)。杉歴8年。杉マスターを目指し奮闘中!
吉野中央木材ホームページ: http://www.homarewood.co.jp
ブログ「吉野木材修行日記」: http://homarewood.exblog.jp/もよろしく!ほぼ毎日更新中です。

月刊杉web単行本『吉野杉のハラオシをしよう!』: http://www.m-sugi.com/books/books_ishibashi.htm
月刊杉web単行本『吉野杉のハラオシをしよう!2』: http://www.m-sugi.com/books/books_ishibashi2.htm
   
 
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