特集宮崎

 
あたらしい日向市と富高小夢空間がつくりだしたもの
文/海野洋光
 
 
 

魔王から次なる指令がきた。
でも、とりあえず「鍋」について書こう!
冬は鍋に限る。日本人であれば、寒い冬に仲間とつつく鍋は格別だ。木の芽会の中でも私は鍋には、ちっとうるさい。いや、うるさすぎるかもしれない。食べるからには、うまい鍋を食べたい。ダシは、昆布、かつお節、いりこ、鶏がらなど・・・。鍋の基本がダシであることには、異論はあるまい。
鍋と一口に言っても、鉄鍋、土鍋、銅鍋等々あるので種類を見極める必要がある。火の加減も必要ではあるが、豪快にぐつぐつと沸騰する鍋も冬の鍋の醍醐味だ。
鍋は、人類の偉大な発明品であると誰かが言っていた。「そのとおり!」人類がこのように知能や体力が向上したのも鍋のお陰だ。二本足の直立歩行ができ両手が使える人間は、火を使って肉などの食べ物を焼くことを知った。さらに、鍋の発明は今まで食べられなかったものを食べられるようにした。鍋を使うことによって、これまで摂取できなかった栄養素を体内に取り入れることを可能にしたのである。寒さに耐えられる食べ物としては、鍋以上のものはないだろう。
鍋の原型は、水をすくう容器からだろう。最初は、葉っぱだっただろうか?水をすくい、別の場所に移動する。移動した場所に焚き火があり、容器が暖められ、お湯ができた。そう。先日、上崎で飲んだ「カッポ酒」の原理だ。しだいに、燃えない容器をあれこれと試すようになった。そのなかに今まで食べられなかった硬いもの、苦いものを入れてみた。すると今までにない味が鍋の中で生まれた。その種類は、何千通りもの味になっただろう。日本の鍋の原点は、土鍋だろう。宮崎でも土器がよく出土されるが、木の実や穀物を焼く土器から水をいれ炊く鍋に進化したと考えられる。
日本の鍋は、温まる体の中から「温(ぬく)められる」と言う表現ができる。
気心のしれた仲間と箸を突きながら食べる鍋は、格別だ。外国では、あまり見られない食べ方だが、鍋は、日本人のコミュニケーションとしては最高のツールだ。
良い仲間に巡りあえたときの鍋は、特にうまい!!
この素材でこの味がなぜ引き出せるのか!!と感動すら覚えるものである。
日向に来てまだうまい鍋を食べていないという方は、この冬ゆっくり鍋を真ん中に語り明かそうではないか!


と、ここまで書いたところで、
デザイナー南雲氏について
南雲さんたちは、いわば日向における「鍋」でした。ダシとなる素材は「杉」。富高小学校の子どもたちが、一生懸命「アイデア」と言う材料をいれて、かき混ぜてぐつぐつ煮えてきたところで、子どもたち全員が鍋を囲んで自分から食べ始めました。みんなで「おいしい、おいしい」と言って食べました。「杉ってこんな味がするんだ!」と感動と発見がありました。もちろん、火の加減や味を調えるさじ加減も大切ですが、みんなで食べられる「でっかい鍋」の大きさもポイントでした。
元富高小学校の川崎先生が「あれ以上のワークショップはできない。いままで最高の授業でした」と最大の賛辞を述べられていましたが、いいえできますよ。鍋の良いところは、誰でも作れる料理なのですから。
料理に合った種類の鍋、人数きちんと考えた大きさの鍋、ダシや素材を厳選してそろえたら、あとは、ぐつぐつと煮るだけ。だれでもおいしい鍋はできます。
最後に「愛情!!」を入れるのを忘れずに!

   
  <うみの・ひろみつ>日向木の芽会

   
   
   
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