特集秋田 

 
白神山麓・窓山デザインコンテスト 審査会報告
文/ 菅原温子
 
 
 

審査会は定刻通り午後3時より始まった。審査委員長には日本全国スギダラケ倶楽部会長の南雲氏、審査委員に内田洋行テクニカルデザインセンターの若杉氏、モクネットの加藤氏、持留デザイン事務所の持留氏、里地ネットワークの竹田氏、国土緑化推進機構の木俣氏、林野庁の石神氏の7名。審査に先立ち審査要領の確認と賞について協議を行い、最優秀賞1点、優秀賞を各部門から1点ずつ、特別賞を3点とし入賞者を選考することに決った。

事前登録者数は120人にのぼり、作品応募数は33グループで33点(ランドスケープ部門11点、木材活用部門22点)。北は秋田県から南は広島県まで応募があり、なかでも愛知工業専門学校からは、授業などでとりあげられたのか、多数の応募があった。また応募者の中心を占めたのは20歳前後の若者たちで、グループでの応募が数多くあった。

審査手順は、まず一次審査として各部門ごとに審査員が3点の作品を選び、1位=6点、2位=3点、3位=1点の点数をつける。具体的には付箋に点数を書いたものを作品に貼っていき、それらを集計して、両部門合わせて上位6点を選ぶ。それら作品に対して、それぞれの審査員が審査基準に照らして採点とコメントをつけて審査をする。

審査基準は、白神山麓・窓山デザインコンテストの主旨である「農林業の体験や収穫祭などが行える、自然に親しむ場のデザイン」に添った作品で、(1)美しい景観形成につながっている(2)地域資源の有効利用がされている(3)持続可能性が考えられている(4)実現性が高い(5)楽しい の審査項目を満たすこと。各項目5点満点とし、各審査員の点数の合算と、一次審査の結果を勘案して、入賞順位を決めるというもの。



  審査の様子
 

第一次審査の結果、ランドスケープ部門では「窓山再生の森(39点)」「madoyamaいえnet(24点)」「窓山道(2点)」「united(2点)」「窓山さんぽみち(2点)」「キラ☆キラ窓山プロジェクト?3つの目線と光の道(1点)」の6作品、木材活用部門では「薪のハコ(27点)」「縁側のある生活(16点)」「窓山の自然と共に(10点)」「おこぜまつり(9点)」「窓山の風景を飾る(4点)」「農家に別荘があったなら・・・(3点)」「ツリーハウス(1点)」の7作品に得点が入り、両部門あわせて上位6点に対して最終審査を行った。

ランドスケープ部門からは、ほぼ異論無く2作品が選ばれたが、木材活用部門では審査員の意見が割れ、激しく議論がかわされた。最終的には地域性やデザイン性を重視して、全体で最優秀賞1点、ランドスケープ部門と木材活用部門の優秀賞各1点、加えて特別賞として、株式会社内田洋行賞とNPO法人緑の列島ネットワーク賞各1点が選ばれた。

総評

若杉▲今回のコンペ(の作品)を見て、WEBでしか公開していない、窓山という秋田の一部の地域であるということに関わらず、アイディアの展開、問題解決の手法という点においては、非常に幅広く提案がされていたということに対して、非常にびっくりしました。クオリティーに対しても、デザインのクオリティー(を見るのが)初めてだったので、どこまで定義するのかという点はあるのかも知れませんけど、いろんなアイディア、そして次の時点でどう展開されるかという、我々も、開発の理想となるような、ネタとなるようなものが、非常に多く仕込まれていた、という気がしました。 一回目ですけれど、結構良い結果を出せた気がします。

持留▲今回のコンペは、窓山というとても行きにくい場所でどう(場所を)デザインするかというコンテストで、参加するのは難しいのではないかという危惧があったのですが、いざ、蓋を開けてみると、独創的なアイディアがたくさんあり、みなさんの発想の豊かさに驚いております。

石神▲最初に考えていたものとは懸け離れていたけれど、非常に若い人たちがこういったかたちで木材の利用ですとか、産業地域の活性化みたいなことに、関心をもっていたということに、非常に驚いています。またこれが実現ものとなればもっと嬉しいと思う。またいろいろとアイディアをだしてくれればと思っています。

木俣▲このコンペの出展作に、入賞した作品以外にも、参考になるものがアイディアがありましたので、こういうものを是非全国で緑をまもる活動している市民団体に紹介しながら、少しずつ森を守っていこうという動きをすすめていければと思っております。

加藤▲今回は若い人たちにアイディアを出してもらって、そのエネルギーをいただく。まさに今日は賞をとったみなさんが、来ていただいていて、これからいい村作りの為に、秋田にも来てもらって、楽しいことを一生懸命やりたいなと思っています。デザインに関しても、良い所がいっぱいありますので、全作品それぞれのいいところを、取り入れて里山再生をしたいと思っております。

南雲▲最近こういった木材のコンペですとか、ワークショップだとかが、日本全国で行われるようになってきました。数年前には考えられなかったようなことで、日本中で、森林だとか、杉だとかが語られるような時代になってきたのが、ちょっとビックリなのですが、このスギダラケ倶楽部もタイミングをつかんでやっているようなところです。 
審査の過程などを、お話したいと思います。
全体的にはランドスケープ部門と、木材活用部門に分かれていましたが、
まず、「ランドスケープ」の方は、比較的レベルの高いものが揃っています。その中で受賞した「窓山再生の道」「madoyamaいえnet」その二つは、ほとんど審査員の迷いなしに、一回の投票で決まりました。
「窓山再生の道」は非常に正確に窓山地域の性格をとらえていてプランニングからゾーニングから、現地にいったのかなと思う程、細かい所まで研究されている。地元の人が見ても面白いかなと、いうところがあって、加藤さんのなかでも、是非、秋田で。ということになりました。そういうことで最優秀賞に、ほぼ満場一致で決まりました。
「madoyama いえ net」は、近未来5年後、10年後くらいに、窓山に人が住みだして、おそらくこんな風景になったら、理想的なんじゃないかというふうなイメージをしました。これもかなり、高い票を集めました。細かい家の構造ですとか、造りだとかその辺のところは、評価に入れてしまうと歪んでしまうので、近未来の窓山をどうイメージしているのかということで、評価が得られた。ということです。
木材利用の方は、票が割れまして、全体的には建築系も多くて、建築で拠点を作ってこの地域を頑張らせようじゃないかというのも3・4点ありました。優秀なものもありましたが、今回評価基準の中に、場所も場所なので、協力できる人で集まって、みんなで作っていこうということが根底にあるということころから始まったので、極めてお金がかかる、設計が難しいというものは、最初の段階で外しました。そういう中で、選んだのですが、「薪のハコ」は、これは薪のある風景が非常に美しくて、火を使うっていう事では生活にもっとも接した部分の、木の薪が風景を作るっていう所が評価されました。スケールとか構造とかそういう所ではいろいろとコメントがありました。ただ、発想とデザインのきれいさ、そういう所を含めて部門賞ということになりました。

(特別賞は…)
若杉▲(内田洋行賞について)
町づくりや地域を復興する上で、小物から入るっていうよりも、市民レベルで、関れる範囲の中でどうふうにことが起きていくのか、という人のつながりが、ものすごく重要だと思います。(うなずく南雲さん)町づくりだとか、地域復興だけではなくて、ねぇ!(千代田さんを見る若杉さん)僕ら企業の製品開発とか、企業の中の組織作りもまったく同じなんです。いくら素晴らしいシステムがあっても、素晴らしい環境があっても、そこに住む人たちがどういう風につながっていくのか、っていう原始的なものをどう捉えて、デザインしていくかっていうことが非常に重要だなと思っております。
「おこぜまつり」今回の作品の中で、唯一このソフト的な面を提案で、評価はいろいろあったが、どうしても外せない。これはどっか(部門賞以外)で評価すべきだろうということで、内田洋行の社長より内田洋行賞として賞をおくらせていただくということになりました。

加藤▲
「縁側のある生活」、これは近くの山の木で家を作ろうという運動を全国で展開しているNPO法人緑の列島ネットワークの賞です。緑の列島ネットワークでは家作りに重点をおいた活動をしていますので、さきほど理事長とお話をして、我々の考えをかたちにしたデザインであるということで、是非、この賞を与えたいということになりました。

南雲▲講評は終りますが、窓山っていう非常に特殊なテーマのお陰で、木材や杉を使ったという点においても独創的な作品が揃ったと思います。参加していただいたみなさんに感謝しております。

   
 
 
  ●<すがわら あつこ> 温だら/スギダラ秋田支部イメージマスコット
日本全国スギダラケ倶楽部 秋田支部長 北のスギダラ http://sgicci.exblog.jp/
   
   
   
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