杉コレクションは、日本で唯一の杉材のデザインコンテストです。この杉コレの入選作品以外で日本中のデザイナー、建築家などの専門家が注目している点があります。ひとつは、審査委員長に内藤廣東大教授を迎えている点。二つ目は、実物大の作品を主催者が作り上げる点。3つ目は、この杉コレクションを素人集団で運営し、しかも毎年その主力メンバーが完全に入れ替わる点です。この3点は、実は、コンテストを主催する団体(プロの目)では、考えられない非常識なことらしいのです。
日本最大のデザインコンペ、グッドデザイン賞の審査委員長の内藤廣教授が、宮崎県の素人集団のデザインコンテストに審査委員長を引き受けていることにどのデザイン・建築関係者に聞いても「?」なのです。しかし、これには大きな理由があります。内藤教授は、日向で開催されたシンポジュウムで老人の悲痛な叫びにも似た訴えを聞いたのです。「先祖伝来の山を守りたい一心でやってきたが、もう持ちこたえられない」と言う老人の叫びは、日本の林業・木材業の惨状をよく表しています。このままでは、山や木材がだめになるそれには「杉」だと。木材業界の青年団体である木青会の無謀な動きに快く引き受けていただいた理由がここにあるわけです。
実物を主催者が製作するコンテストなんてどこにもありません。しかし、応募者にはこれは魅力的です。世界的な建築家内藤廣氏に選ばれた自分の作品が実物となって登場し、多くの人たちに披露されるこんなデザインコンペは、世界中探しても見つからないでしょう。それは、宮崎が、都城が杉の生産地であると同時に杉を加工し、モノを作る技術を持っているという証なのです。直に、デザイナーや設計者の要求に応えることのできる地域だと言うことを日本中にアピールしているのです。
杉コレのテーマや杉コレの運営母体は毎回、変わります。このような非効率的な運営方法をとっているコンテストはどこにもありません。しかし、木材業界が一番不足している点は、素材である杉をデザインによって付加価値、新しい命に変えてくれるデザイナーや設計者との結びつきだと思っています。●を■にして儲けた時代は終わりました。杉コレのノウハウ・ソフトは、オープンであるべきですし、更に多くの人に関わって欲しいと考えています。開催に当たって要求される技術やテクニックは並大抵のものではありません。しかし、杉コレを終えて得られた団体やメンバーのキャリアは、次に自分たち独自の活動をするという原動力では、最高の品質のソフトになることでしょう。
そして、杉コレの一次審査が終わりました。これは、山登りで例えるならば、頂上がはじめて見えた頃なのです。まだまだ、道のりは遠いですが、山頂でのビールはまた、格別に上手いものです。 |