連載

 
東京の杉を考える/第21話 「多摩産材って何だろう」
文/ 萩原 修
あの9坪ハウスの住人がスギダラ東京支部長に。東京から発する杉ものがたり。
 
 

『多摩産材』という言葉が気になりはじめた。確かに、東京の中には多摩地域にしか山はない。だけど、『多摩』と聞いて、他の地域の人はどんなことを想像するのだろうか。東京の都心に住む人は、『多摩』は、東京じゃないと思っているような気がするし、全国的にも、『多摩』の知名度は低いだろう。だからこそ、多摩をアピールすることも大事なのだろうか。『産材』というのもひっかかる。『さんざい』とパソコンでうって変換すると『散財』となる。あんまりいいイメージじゃない。『産業』や『材料』という言葉からは、あまり文化や生活の香りがしてこない。花粉も近づいてこない。

それじゃあ。別に名前をつけるとしたら何がいいのだろう。ストレートに「東京の木」でもいいような気がする。あるいは、「東京育ち木」とか。「東京生まれ木」とか。変かな。あるいは、山や森を強調して、「東京の山で育った木」とか。「東京の森が育んだ木」とか。くどいか。いっそカタカナで「トーキョーウッド」というのは、もっと変だよね。「トーキョー材」ならいいのかな。「トーキョーボク」だと、なんかトウヘンボクみたいだね。スギダラとしては、「杉」を強調したいから、「東京杉」とか「トーキョースギ」というのがいいかもね。「東京杉」がブランドに育つ日はくるのだろうか。

なんてこともぐだぐだと考えながら、3月22日に「2008年春の多摩産材ツアー」に行ってきました。スギダラトーキョーとして2回目となる地元東京の山と林業と製材の現場を見に行こうというこのツアー。今回も武蔵五日市の中嶋材木店にお世話になりました。http://www.gws.ne.jp/kigokoro/
昨年10月の見学会は、8人しか参加者がいなかったのですが、今回は、なんと総勢26名。武蔵五日市の駅で集合して、車6台に分乗して、約1時間走って山の奥へと向かいました。昨年夏頃から、花粉症対策のために伐採されはじめた山が、約半年かけて、ほとんどまるはだかにされていて、なんだかちょっとせつない感じ。その後、中嶋材木店の材料置き場や製材所を案内してもらいました。スギダラのツアーは、見学も大事だけど、その後の懇親会が大切みたいですね。スギで出会った人が、それぞれの思いを語り、立場の違いをこえて、個人としてつながっていく。スギダラ宣言の最後の文章には、「大人や子供、組織や企業、地域や分野を超え、意気投合した仲間達とその可能性を語り、様々なプロジェクトを実行するためのネットワークをつくり、日本中に広げいくことを目的とする」とあります。それを実践している実感がわくツアーでした。

最後に、中嶋さんが用意してくれたコピーの文章を転記しておきますね。
この文章を肝に命じて、「スギダラトーキョー」では、次の展開を考えていきたいです。

   
 
   
  「この地域では古くから江戸に林産物(木材・薪・炭など)を供給し、その中継点として「市(イチ)」で栄えた街です。毎日五日ごとに市を開いていたため五日市という地名がついている。流通変化、建築仕様の変化など様々な社会情勢から国産材の自給率は下落の一途をたどってきました。しかし、大都会といわれる東京でも林業がおこなわれており、それらを製材する業者も少なからず残っています。全国的に見れば大変小さな林業地です。しかし、東京は何事にも日本一の消費地であり、色々な考え方の人もたくさんいる特殊な地域であり、立地条件的には恵まれた地域だと思います。昔から、地場の工務店はこの東京の木であたりまえに家をつくっていました。腕の良い大工もまだたくさん残っています。大手メーカーのシェア拡大、物流の利便性などのコスト的に厳しい競争時代へと突入し地域産材は地の利では恵まれていながら苦戦しているのが現状です。
食物だけでなく、林産物も含めて世界的には資源の奪い合いが始まり、自給率の低さが問題視されており、世界的には1分間にサッカーコート36面分の面積が消滅していると言われています。自分のまわりを見渡せば山に囲まれた地域であり、空から見れば緑に覆われた山林資源豊かなこの国で、私たち一次産業は存続せねばならない重要な職種と思い、やりがいをもって取り組んでいます。今の時代に沿った使い易い資材としての商品開発などまだまだ遅れているのも現状であり、大きな課題です。
環境に対して、出荷者の顔が見え安心できるものを使いたいと思っている方は年々増えています。また、そういう方が多くいるのもこの東京だと思うのです。気軽に訪れることができる、この地の利を活かしながら、様々な方たちとも関わりあいながら、色々なことにチャレンジし、山に影響がでるような需要開拓を進め、次世代に胸を張って引き継げることができる、活気ある産業にしていきたいと思います」
   
   
   
   
   
   

●<はぎわら・しゅう> 9坪ハウス/スミレアオイハウス住人。

 



 
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