連載

 
あきた杉歳時記/第24回
文/写真 菅原香織
すぎっち@秋田支部長から、旬の秋田の杉直(さんちょく)だよりをお届けします ・・・・
 
 

秋田は平年より1週間早くソメイヨシノが満開を迎え、いま見ごろの桜は山桜や八重桜。レンギョウ、ユキヤナギ、ハナズオウなどの色とりどり庭木は花ざかり、スイセンやジンチョウゲの甘い香りにつつまれ、街路樹の新芽もまぶしく光る本格的な春になりました。

   
 
  コンクリートの照り返しのせいか?毎年構内で真っ先に咲く大学図書館前の桜。
   
  2006年に開学十周年を記念して植えた、しだれ桜がやっと見頃に。   こちらは大島桜。
   
 

さて先日、NPO木の建築フォラムから、昨年10月秋田県能代市で開催された「第4回木の建築賞」を特集した会報誌が届きました。「北国の風景をつくる家と学校」というサブタイトルにあるように、応募の内訳が住宅5点、学校4点、公共施設3点、店舗1店、活動5点という内訳で住宅と学校の応募が目立ちました。なかでも学校建築はそれぞれの地域の杉を活用して建てられたものばかりで、日頃コンクリート打ち放しに囲まれている私にとっては本当にうらやましいスギダラケ空間でした。

   
 

みごと木の建築大賞を受賞したのは山形県の三川町立東郷小学校。庄内平野の田園地帯に立つ木造校舎です。樹齢150年以上の16メートルもの杉の巨木を豪快に使ったエントランスホールが印象的で、雪国特有の「根曲がり材」を方杖に使い、北国らしい力強い風景を生み出しました。また、企業の冠賞のNCN木骨構造賞には、住宅用の一般流通材の4寸角の並み材だけを使って梁や柱をシステム化して建てられた能代市の常盤小中学校が入賞しました。(写真はあきた杉歳時記第19回をご覧ください)

   
 

木の建築賞には能代市の浅内小学校と秋田市の国際教養大学の宿舎も入賞しました。どちらも設計チーム木協同組合が手がけたもので、ウォームグレーの自然塗料を施した秋田杉の縦羽目の外装が、モダンですがどこか懐かしい感じがします。特に国際教養大学の寄宿舎は、これがコンクリート打ち放しやサイディングを張った建物だったらさぞ殺伐とした風景になったと思います。けばけばしい外装のアパートが乱立している市街地も、この寄宿舎のように外装材を杉に統一するだけでも風景が変わるんじゃないかなと思いました。

 
向かい合う棟の間には屋根のある通路があります。
 
  国際教養大学の寄宿舎。
   
 

さらに、見た目だけじゃない杉の魅力があるんですよ。たまたま先週この国際教養大学に新しく図書館が完成したということで、学生と見学に行きました。あいにくとかなり強い雨のなか、宿舎の中の通路を通り過ぎようとすると、思いがけずふわっと杉の甘い香りに包まれました。壁が雨にぬれて香りが立ちこめていたんです。香りで癒される宿舎なんて素敵ですね。きっと卒業しても学生時代の思い出とともに、杉の手触りや香りが思い出されることでしょう。

また、新しく建てられた図書館も圧巻でした。デザインコンセプトは「本のコロセウム」。半円状の本棚が段状に配置されていて、秋田杉を使った傘の骨状の屋根が圧巻です。屋根を支える梁はくぎを使わない伝統工法で組み立てられており、すべて無垢の秋田杉だそうです。

 
半円状の大空間
   
  6本の杉の無垢材   壁一面に書架
   
 

書架の裏側は閲覧席になっていて、下から見上げると見えないようになっています。300席もあって学生は24時間利用がOK。パソコンを持ち込んで勉強できるので、夜は寮生たちで満杯だそう。資料はすぐそばにあるし、勉強がはかどると学生に人気のスペースです。

 
  最上段の閲覧スペース。椅子はシートの色ごとに高さが違う。
   
 

勉強の合間に顔をあげると、目の前には杉の大空間が広がってリラックス効果もありそう。本と杉に囲まれた劇場のような空間を楽しむだけでも一見の価値ありです。一般の人も利用できますので、(平日は午前10時から午後10時まで、土日祝日は午後6時まで)お近くにおいでの際はぜひ立ち寄ってみてはいかがですか?

   
   
  和傘のような構造   見上げると杉
   
   
 
   
   
   
  ●<すがわら かおり> 教員
秋田公立美術工芸短期大学 産業デザイン学科 勤務 http://www.amcac.ac.jp/
日本全国スギダラケ倶楽部 秋田支部長 北のスギダラ http://sgicci.exblog.jp/
   
   
 
 Copyright(C) 2005 GEKKAN SUGI all rights reserved