かみざき物語り その後
構成/ 南雲勝志
  いま地域が生き残るために・・・
 

3月の初旬に日向に行った時のこと、海野さんが唐突に話し出す。

「一応報告ですけど、今月15日、上崎で菜の花祭りがあるんですよ。」
「え〜、その日は日南で景観デザインフォーラムがあるから無理っすよ。」
「でも何ですか?菜の花祭りって。」
「上崎橋の上流が一面菜の花畑になるんですよ。前に種蒔いたところが。」
「見たい!、手摺りのメンテの時も杉コレで行けなかったし・・・」

いつもそんな調子で行けないのだ。

上崎橋の完成から2年半ほど経つ。しかしもっと前の出来事だったような、なぜか5~6年前のような気もする。それだけ濃かったのかも知れない。いつも気になりながら、その後のイベントには一度も行けてない。そう昨年の手摺りのメンテナンスもその日がバッティングしていけなかったのだ。
高千穂に行く途中など何度か通るのだが、時間に追われ、いつも通過する程度だ。ブルーのアーチを見る度にあの上崎ものがたりを思いだす。
ご存じない読者の方のために、月刊杉の上崎プロジェクトの記事「かみざき物語り」 と新聞記事「明日に架ける橋」 を紹介する。

 
●かみざき物語り
●新聞掲載 (6回)  「明日に架ける橋」 宮崎日日新聞 2006.11.14〜11.21
   
  延岡振興局の植村さん(当時)に呼ばれ、上崎と関わり始めたのは2004年の秋、そして上崎橋の完成は2007年11月20日。
上崎における地域と絡めた橋づくりは当初手探りで始めたが、約一年後、橋の高欄を地元産の杉を使い、取付もみんなでやる。そして完成後もみんなで守りメンテナンスを含めてやっていこうというプロジェクトに発展して行った。

戸数25戸、住民80余名、しかも若者が少ない高齢化村落のの上崎地区にとってその実現は簡単なことではなかった。竣工式まで頑張ったとしても継続は気の遠くなる話しでもある。
振り返って見ると、何十回と行われた集会、そして様々な人との関わりの中で徐々に気持ちが実現の方向に向いていったと思う。

事業主体の宮崎県延岡森林振興局、そして延岡市(合併前は北方町)の職員はもとより、海野さん、田丸さんのバックアップ、地元福祉大、そしてスギダラと小さな村の大きな出来事は関わる人びとを増やしていった。そして地域の幸せとは、自立とは、そして公共事業とは、これからのデザインとは・・・様々な命題を含みながら、様々な迷いと自身を両方持ちながら、結局地域は勇気を持った決断をした。
僕としても、スギダラとしても上崎プロジェクトはその後に影響を与えた大きな出来事だった。いろんなことを提案し、逆に教えられ、たくさん話し、一緒に飲んで、感動して・・・
しかしながら今、大勢いたプロジェクトを支援した仲間達は、地域にはほとんどいない。気持ちで応援していても僕のようにイベントさえ行けないでいる。

そんな中で、上崎の人びとはしっかりがン張っている。後悔の言葉も聞いたことはない。二度の手摺りのメンテナンス、そして菜の花祭りとしっかりと自分たちの団結を保ちつつ、地域の発進の力にしている。人を呼ぶためにではなく、自分たちの未来のためにやっている。そんな風に見えて来る。「もともとはなからよそ者のことはあんまりあてにしてないよ。俺たちの地は俺たちが守っていくさ。」 と言わんばかりに。
新聞記事を見ると、「わずか25戸の集落だが、橋が完成した喜びを忘れることなく、皆が楽しく生きていけるような地域づくりに今後も励みたい。」と書いてある。
たいしたものだ。本当にたいしたものだ。

今年の秋は必ずメンテナンスに行こうと思っている。植村さん、一緒に行きましょう!
なので、杉コレの審査の日にちとずらして下さいね。甲斐さん。
   
 

さて、今回はいつも上崎を応援している田丸さんからたくさんの写真を送って頂いたので、田丸さんのメッセージを添えて、菜の花祭りの報告をしていただきます。
田丸さんはかみざき物語り 第七回の執筆もしていただいています

   
 
   
 
その後の上崎地区レポート
 
文・写真/田丸貴久
   
  去年11月のメンテナンスの後で、みんなで種まきした菜の花が満開を迎えた。
上崎橋建設時の『ふるさとづくり協議会』会長だった甲斐丈義さんから菜の花祭りの嬉しいお誘いを頂き早速家族で出掛けた。
 
  昨年8月26日に行われた、第2回上崎橋高欄のメンテナンスの様子。
   
  沢山の住民が集まった。   高欄の清掃、ワックスがけ
   
      巣箱づくり
 

秋晴れの11月、子供達は裸足になり畑に横一列に並ぶと疾走しながら種まきをした(豆まきか!?)梶原さんから「スーパーきかん坊」と称号を与えられた我が息子とその姉は何度も種のおかわりをもらいまきまくった。

到着するやいなや自分の蒔いた種の成長振りに感激しきり「ほら、あそこ撒いたよね!」うん、どうりで密集地帯もチラホラあるね〜!上崎の緑と菜の花の黄色のコントラストは目が覚める鮮やかさ。そこに上崎橋の控えめな青。。。なんともいい感じです。スタンプラリーは橋を見てほしいから橋詰にポイント@→桃の花を見てほしいからポイントA→菜の花を隅々まで見てほしいからポイントB。クイズに答えて三つスタンプもらったら上崎駅で景品もらって、その後は餅つき。各ポイントで待っていてくれた上崎のおばちゃんや青年、皆良い顔してました。餅つきも慣れてらっしゃる上崎の皆さん、参加者もそれぞれ杵を手にして餅つき体験そして、つきたてをほおばりました。

五ヶ瀬川の対岸を走る延岡と高千穂そして熊本県をつなぐ国道218号線を下って来ると、一面の菜の花が、ぱぁっ!と目に飛び込んできます。地区の集計だとこの日約200人が訪れたそうで、連日多くの人たちが上崎を対岸から見つけ、橋を渡って来るきっかけとなったようです。

 
  上崎橋の上流に植えられた菜の花。下に旧上崎駅及び鉄道が見える。
 
  菜の花畑と上崎橋。ほんとうに奇麗だ。
   
  手作りの看板   広報延岡の撮影風景。
   
  恒例の餅つき大会。   最後にみんなで花の苗を橋詰めに植える。
  宮崎日日新聞コラム“くろしお”でも『県北の新名所に・・・』と紹介、広報のべおかの4月号の表紙にも海野2Jr&田丸Jrとのコラボで登場。やらせではありませんよ〜市のスカウトです。幾度もの駄目ショットの末の傑作?皆さん見てやってください。ジャーン!

いつかメンバーの長谷川さんが言ってました、『メンテは毎年必ずやりますよ。他にもいろいろ考えて盛り上げたいしやらないといけないとみんな思ってるんです。とりあえずは私たちのペースと規模で無理をせずにね。』と。   
小春日和、上崎での休日に心和みました。




●<たまる・たかひさ> (有)マルウッド
 
 

 

  広報『のべおか』の表紙。すごい!
 
   
 

田丸さん、どうもありがとうございます。地域でバックアップしてくれている田丸さん達がいて本当に良かった。 しかし広報延岡の表紙。すごいな〜。 やっぱり、田丸さんや海野さんの子供達は違いますね〜。絶対なんかやってくれそうです。 (南雲)

 

 

 

   
  ● <なぐも・かつし>  デザイナー
ナグモデザイン事務所 代表。新潟県六日町生まれ。
家具や景観プロダクトを中心に活動。最近はひとやまちづくりを通したデザインに奮闘。
著書『デザイン図鑑+ナグモノガタリ』(ラトルズ)など。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部
 
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