連載
  杉という木材の建築構造への技術利用/第46回
文/写真 田原 賢
  N値計算法の中の『L』の原理となった柱カウンターウェイト検証実験 後編5
 
 
*第42回 N値計算法の中の『L』の原理となった柱カウンターウェイト検証実験 後編1
 
*第43回 N値計算法の中の『L』の原理となった柱カウンターウェイト検証実験 後編2
 
*第44回 N値計算法の中の『L』の原理となった柱カウンターウェイト検証実験 後編3
 
*第45回 N値計算法の中の『L』の原理となった柱カウンターウェイト検証実験 後編4
   
   
  3.実験結果
   
  3−2.実験結果
   
  3−2−1 実験結果
 
(1) ジャッキ部及び土台反力の時間-荷重関係グラフ
(2) 時間-柱ロードセル荷重関係グラフ
(3) 実験状況写真
(4) 水平耐力、梁浮き上がり、柱頭ロードセル値一覧図面
(5) 水平耐力、カウンターウェイト推定値一覧表
   
  つづき
   
   
   
 
(3) 実験状況写真
   
   
 
   
 
写真ー1
試験体−積載荷重
No.3試験体の積載荷重(溝形鋼材30kg)を写真のように配置した。
床部分は住宅用床荷重60(kg/m2)を目標に配置を考えたが、屋根・壁荷重を想定した周囲に写真のように4本ずつ配置するのが限度であったため、実際には72(kg/m2)の床荷重となっている。
写真ー2
試験体−載荷点
載荷ジャッキと試験体の接点部分である。
耐力壁の剛体的回転によって生じる梁の浮き上がりに従って、写真のピンがスライドするようになっている。
しかし、柱頭ロードセルや梁浮き上がりなどの測定値から見て、このジャッキ部による押さえこみ抵抗が少なからず存在した事が予想される。
   
   
   
   
 
   
 
写真ー3
試験体−耐力壁・雑壁
試験体の耐力壁は構造用合板の1級1類(t=9)の両面張りとなっている(釘はダブルヘッダー釘@100)。合板は梁・土台には釘打ちしていない。
また、直交雑壁は同じく構造用合板1級1類(t=9)で片面張りであるが、腰部のみで上部は開口となっている。
N50にて柱・土台に@150で釘打ちされている。
写真ー4
試験体−計測器
X9・Y1点からX9通りを見たものである。
X通りに沿って並んでいるのが梁浮き上がり測定のための変位計である。変位計の先端からワイヤーで梁と結んでいる。
水平に設置してある変位計は土台の水平変位を見るためのものであるが、ほとんど変化は見られなかった。
   
   
   
   
 
   
 
写真−5
試験体−計測器
梁浮き上がり測定のための変位計は、ワイヤーで梁部と写真のように結ばれている。 柱頭に見えているのが、ロードセルで、圧縮軸力を計測するものである。
写真−6
試験体−計測器
床のねじれを計測するための変位計。変位計からワイヤーを床下にクロスに張り巡らして、ねじれを計測している。 本実験では、変位制御の載荷であるため、ほとんどねじれは見られなかった。
   
   
   
   
 
   
 
写真−7
試験体−No.3-1(押し)
X9通り構面の層間変形角1/30(rad)時の状況。
柱による梁の突き上げ点は、梁中央よりY1通り側(写真右側)に寄っているので、梁はY4通り柱を支点にして持ち上がっている形になっている。
柱脚を拘束するような要素はまったくないので、梁がほぞが良く見えるほど浮き上がっている。
写真−8
試験体−No.3-1(押し)
X1通のY3・Y4間耐力壁の層間変形角1/30(rad)時の状況。
X9通と同様、ほぞが良く見える。
変位計はワイヤーで梁と結ばれている。柱・梁の回転により、実際の梁の浮き上がり値より若干大きい計測値となるので注意する必要がある。
   
   
   
   
 
   
 
写真−9
試験体−No.3-1(押し)
Y1通X2・X4直交雑壁の層間変形角1/30(rad)時の状況。X1通構面(写真右方)の梁が全体的に浮き上がっている影響により、Y1通梁も浮き上がっている。
X3通柱上の梁浮き上がり測定値は4mmほどであるが、実際には柱が回転しているだけのように見える。X3通柱は浮き上がっているように見うけられる。
写真−10
試験体−No.3-1(引き)
X9通りの層間変形角1/30(rad)時の状況。
   
   
   
   
 
   
 
写真−11
試験体−No.3-1(引き)
層間変形角1/30(rad)時のY4通X5・X9間雑壁柱頭部の状況。
X9通の梁のY4側が浮き上がっているので、Y4通梁にも影響が及んでいる。
写真ー6 の時と同様、X9から1.5間のX6通りは回転のみで、梁浮き上がり範囲はX6・X7間程度までと思われる。
写真−12
試験体−No.3-2(押し)
X1通り耐力壁の層間変形角1/30(rad)時の状況。
No.3-1試験体に直交雑壁柱頭金物をつけた試験体であるが、変位制御なので当然の事ながら、No.3-1と同様に、3cmほどの柱浮き上がりが見られる。
   
   
   
   
 
   
 
写真−13
試験体−No.3-2(押し)
Y1通りX1・X5間直交雑壁の層間変形角1/30(rad)時の状況。
X1通りの浮き上がりは金物なしの場合のNo.3-1と同程度であるが、直交梁の浮き上がりは、金物がある分浮き上がり範囲が少なくなっている。浮き上がり範囲はちょうどX3通り位までと見られる(一番手前がX1通り)。
写真−14
試験体−No.3-2(引き)
Y4通りX6・X8間直交雑壁の層間変形角1/30(rad)時の状況。
浮き上がり範囲が少なくともX7通りまで及んでいる事が確認できる。
   
   
   
   
 
   
 
写真−15
試験体−No.3-3(載荷前)
No.3-3は中央構面に耐力壁が半間加わったものである。
No.3-3試験体のみ引き始まりで載荷を行った。
写真−16
試験体−No.3-3(引き)
層間変形角1/30(rad)時のX1通構面状況。
前回までの結果、引き載荷の耐力が押し載荷に比べ小さい傾向が見られたので、確認のため逆から載荷した。
その結果、やはり同様の結果となった。
押引の順序ではなく、ジャッキ抵抗の影響の仕方の違いが、押引で異なり、耐力の違いに影響しているのではないかと思われる。
   
   
   
   
 
   
 
写真−17
試験体−No.3-3(引き)
層間変形角1/30(rad)時のY4通りX5・X9間の状況。
耐力壁が中央構面に追加されたことにより、引き載荷の場合、Y4通の梁はすべて浮き上がっていた。
写真−18
試験体−No.3-3(押し)
層間変形角1/30(rad)時のY1通X1・X3通の雑壁上部の状況。
写真一番手前のX4通柱頭が浮いているか微妙なところであるが、浮き上がり範囲は大体No3-1試験体と同様にX3・4間程度(1.82〜2.73(m))までであると推測される。
金物がない場合は、今回の全試験通じてこの程度の浮き上がり範囲であった。
   
   
   
   
 
   
 
写真−19
試験体−No.3-4(押し)
層間変形角1/30(rad)時のY4通X3・X5通の雑壁上部の状況。
X1・X5耐力壁構面によってY4通りのX1・X5間の梁は全体的に浮き上がっている。
浮き上がりが大きいため、柱頭金物の釘(ダブルヘッダー釘)が抜けかけているのが確認できる。

写真−20
試験体−No.3-4(押し)
層間変形角1/30(rad)時のY4通の雑壁下部の状況。
雑壁柱脚部は、柱脚金物と合板で土台と緊結されているため、変化は見られない。
   
   
   
   
 
   
 

 

写真−21
試験体−No.3-4(引き)
層間変形角1/30(rad)時のY4通X3・X5通の雑壁上部の状況。
引き載荷の場合もこの通りの梁の浮き上がりが大きく、柱頭金物の釘の抜けが見られた。
写真−22
試験体−No.4積載荷重
No.4試験体の積載荷重の配置は写真の通りである。
床荷重はすべて72(kg/m2)で、周囲にはすべて溝構4本ずつ(置き方が異なるが)配置している。
   
   
   
   
 
   
 

写真−23

試験体−No.4-1(引き)
層間変形角1/30(rad)時のX1通の柱脚。
この試験体はNo.3-3に増築(増築部に耐力壁なし)したものである。
写真奥がX1通の2枚の耐力壁で、それによる浮き上がりが、増築部分にも影響していた。梁継手は耐力壁側がメスで増築側を持ち上げる形になっている。
No.3-3と比較すると、浮上範囲増→C.W.増→耐力増となっている。
写真−24
試験体−No.4-1(引き)
層間変形角1/30(rad)時のY4通のX2〜X5通雑壁柱頭部およびX5通梁継手。
耐力壁の位置から、引き載荷の場合はY4通雑壁の柱はすべて浮き上がる。
梁継手のメス側がオス側を持ち上げている様子がよくわかる。
   
   
   
   
 
   
 
写真−25
試験体−No.4-2(押し)
層間変形角1/30(rad)時のY4通のX2〜X5通雑壁柱頭部およびX5通梁継手。
梁継手の真下に耐力壁が配置される場合。
突き上げ点が継手メス側の梁を押し上げ、オス側を持ち上げている。
写真−26
試験体−No.4-2(押し)
層間変形角1/30(rad)時のX1通構面Y1(写真左)からY6。
増設側(写真右側)は耐力壁により梁中央部が突上げ点で梁が全体的に持ち上げられる。
Y1通の耐力壁による梁浮き上がりはY1通り側のみで、継手部もオス側のみ浮き上がると思われたが、オス側がメス側を押し上げる形で持ち上げる現象が見られた。
   
   
   
   
 
   
 

写真−27

試験体−No.4-2(引き)
層間変形角1/30(rad)時のX5通構面梁継手部分。
引きの場合は増設部分の継手オス側のみが浮き上がる状態となる。
耐力壁が梁継手の真下に配置されている場合、オス側のみが浮き上がると、メス側の梁と耐力壁の合板受け材が接触し、耐力壁の機能を妨げるおそれがあるので、注意する必要がある。
写真−28
試験体−No.4-2(引き)
層間変形角1/30(rad)時のX5通構面梁継手部分を上方から見た写真。
オス側のみの浮き上がりにより、床の構造用合板(1級1類t=12)が曲がっている様子が見える。
   
   
   
   
 
   
 
写真−29
試験体−No.4-3(載荷前)
増設部分の耐力壁配置。
No.4-2から半間耐力壁の位置が、Y8通り側へずらしている。
写真−30
試験体−No.4-3(押し)
層間変形角1/30(rad)時のX5通構面梁継手部分。
オス側のみの浮き上がりとなっている。
   
   
   
   
 
   
 
写真−31
試験体−No.4-3(引き)
層間変形角1/30(rad)時のX5通構面梁継手部分。
引き載荷の場合は梁中央に突き上げ点があり、梁は全体的に平行に持ち上がっていた。
写真−32
試験体−No.4-3(引き)
層間変形角1/30(rad)時のX1通構面Y2〜Y8通り。
Y8通りが突き上げ点となる場合、継ぎ手位置まで浮き上がり範囲が及んでいるかどうかは微妙なところであった。
   
   
   
   
   
   
  ●<たはら・まさる> 構造設計家
「木構造建築研究所 田原」主宰 http://www4.kcn.ne.jp/~taharakn
大阪工業大学大学院 建築学科 客員教授
月刊杉web単行本『杉という木材の建築構造への技術活用』 http://www.m-sugi.com/books/books_tahara.htm
   
 
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