上崎地区の皆さんが、最初の提案から地区内で粘り強く議論してもらったお陰で、開通式の日に、上崎で走らせることになりました。その知らせを聞いた時は、本当にうれしく思いました。
どんな「計画」でも「実施」となると問題が生じます。車輪はどうするのか?(これは、当時、振興局の植村さんらが解決してもらいました)トロッコの図面で持ち運びの良い組み立て式にするためには・・・。(これは、うちの大工さんと海杉とで考えました)資金は?保管場所は?実際に運行するに当たって安全対策は?ひとつひとつをコツコツと解決していかなければなりません。ほとんど鉄屑状態の保線用トロッコの車輪をヨシモトポールの協力で改修して、新品同然にしました。(修理した車輪は、もう、既存の部品は、なくなっていました)南雲さんから図面を頂きましたが、「簡単に持ち運ぶこと」は、出来ない図面でした。組み立て式にするため、また、数人で分解、組み立てが出来るために軽量化も考えました。金物のボルトで接続できるだけでは、どうにもなりません。軽トラせめて1トントラックに載せられるトロッコにしなければなりません。最低2人で積載できることも条件にしました。南雲事務所とのやり取りを繁雑にしたことを覚えています。「屋根の杉板が薄い」と南雲さんから指摘がありました。でも、2分割して二人でも持ち運びが出来なければ、意味がないのです。これらのことは、あとで大いにプラスになりました。
杉トロッコ計画で一番の難所は、「資金」でした。主体の上崎地区の方には、もう負担を掛けられないことは、十分承知していました。聞けば、記念碑を作る資金も大変苦労しているとのことでした。そこで、海杉は、あることを思いつきました。日向市の駅舎のイベントに使えないかと…。はじめの相談は、日向市の方に鉄道高架が開通する前に杉トロッコを走らせることは出来ないか?という提案でした。日向市の方は、いつも前向きに考えてくれます。(感謝)しかし、答えはNOでした。それでも、JRさんとの協議の中でこの返事もかなり時間が掛かりましたが、旧駅舎のサヨナライベントでは使えるという返事でした。(やった!)日向市の方の交渉も、粘り腰で、すごいです。海杉は、早速、日向木の芽会の仲間に杉トロッコの話を持っていきました。北方町の上崎橋のための杉トロッコではなく、日向市駅舎のイベントのための杉トロッコだったら、協力がもらえると信じて仲間に相談をしました。こちらも快諾をえて、すぐに、日向木の芽会として宮崎県産材流通促進機構に資金の申請を出したのです。同機構も杉のPR効果が高いこと、県内でも注目されている日向市駅と高千穂鉄道に使用すること。そして、何より、日向市という行政が絡んでくれていることで資金を出してくれるとの返事をもらいました。どんなプロジェクトも資金の捻出は大変です。今回は、ウルトラCに近い話になりましたが、「粘り杉」と「頑張り杉」が良く持続したものです。
上崎橋の開通前日は、雨でしたが、トロッコが走り出しました。本当に良かったです。絵になりますし、橋だけでなく、もうひとつ想いを加えることができる仲間たちの力を感じました。余談ですが、自分の子どもたちが、私の作ったトロッコに乗って喜んでもらう笑顔は、父親としても最高にうれしい瞬間です。
苦労話も、「粘り杉」のお陰でうれしい思いができました。「日向市駅舎のさよならイベント」での杉トロッコの走行もうれしいことでした。自分が作った杉トロッコが走り出す。杉のトロッコの計画当初は、思っても見なかったことです。一粒で二度おいしいですが、その前に日向市駅舎誕生のイベントでも、お披露目をしましたから、三度おいしいですね。
プロジェクトが成功するためには、仕掛けるモノを十分吟味しなければならないのです。面白いアイデアがあっても出すタイミングも大切です。でも、一番大切なことは、粘り強さです。腰の折れない時間をかけた話しが、多くの人を感動させるイベントを作り上げるということです。
三回もおいしい思いをしましたが、先月、4度目のおいしいが回ってきました。高千穂鉄道の廃止が決まって、神話高千穂トロッコ鉄道に引き継がれ、それから「高千穂あまてらす鉄道」に変更になってしまいました。同鉄道会社の社長に作家の高山文彦さんが就任しました。かなり、存続は大変なようです。海杉は、何とかこの人たちの支援はできないものかと考えていました。もちろん、押し付けでは、ダメです。できれば、自然な形でサポートができればと考えていました。同じ木青会のS君が、日之影なのでトロッコの話をしておいたのです。「何か使う時があれば杉トロッコがあるから…」たったコレだけしか話しませんでした。何の音沙汰もないので半分忘れかけていましたが、S君から「日之影の粟田さんから電話があるから」
すぐに、粟田さんからは「トロッコを貸してほしい」という申し出がありました。
本当にうれしい話です。また、あのレールと車輪の音が聞ける。海杉のブログに書いたら、すぐにコメントが入ってきました。あの赤星たみこさんからです。知っていますか?漫画家ですよ!有名人です。宮崎県日之影町出身だそうで、私のブログにはじめて有名人がコメントをしてもらいました。赤星さんは、なんでも粟田さんの妹だそうです。深角駅のさくら祭りに使いたいとのことで前日、組立作業のお手伝いに行きました。高千穂鉄道の元運転手さんが、本当にうれしそうにトロッコを走らせてくれました。運転手さんは、なんとTRの帽子まで持ってきていたのです。 |