連載
  杉という木材の建築構造への技術利用/第40回
文/写真 田原 賢
  N値計算法の中の『L』の原理となった柱カウンターウェイト検証実験 前編8
 
 
*第33回 N値計算法の中の『L』の原理となった柱カウンターウェイト検証実験 前編 1
 
*第34回 N値計算法の中の『L』の原理となった柱カウンターウェイト検証実験 前編2
 
*第35回 N値計算法の中の『L』の原理となった柱カウンターウェイト検証実験 前編3
  *第36回 N値計算法の中の『L』の原理となった柱カウンターウェイト検証実験 前編4
 
*第37回 N値計算法の中の『L』の原理となった柱カウンターウェイト検証実験 前編5
 
*第38回 N値計算法の中の『L』の原理となった柱カウンターウェイト検証実験 前編6
 
*第39回 N値計算法の中の『L』の原理となった柱カウンターウェイト検証実験 前編7
   
  3.実験結果
   
  3−2.柱カウンターウェイトの負担面積のモデル化
   
  柱浮き上がりによる梁及び床の持ち上がりは、実験結果から以下のような状況が推測される。
   
 

  隅角部における弾性状態での浮き上がり予想図
   
  ・柱の浮き上がり、すなわち、梁を持ち上げようとする力が梁の曲げ剛性に比べてまだ小さいので、梁が直線的な変位を示すと考えられる。
   
 
  隅角部において終局状態での浮き上がり予想図
   
  ・終局状態となると、柱の浮き上がりが大きくなり、梁の曲げ剛性が相対的に小さくなるので、3次曲線的な変位を示すと考えられる。
   
  柱の浮き上がりにより、梁の持ち上がっている部分に作用する荷重がその柱を押さえ込む力となると考えられる。
  ここではこの実験より得られたデータから、下記のように梁の持ち上がり長さ及びその長さから、平面としての柱カウンターウェイトの負担面積のモデル化を提案する。
  以下、隅角部柱を対象にモデル化を行う。
   
   
  ・梁の持ち上がり長さ
 
  梁の持ち上がり長さのモデル化
   
  (1)ジャッキアップした柱を計測点1とし、梁の持ち上がりの終点とする。
  梁の持ち上がり起点は計測点1での変位δ1と持ち上がる梁に取り付けた計測点2での変位δ2をつないで延長させた点とする。
  柱の浮き上がり変位δ1及びδ2が大きくなればなるほど、起点が伸びて梁の持ち上がる部分が長くなる。
  ただし、梁の全長(梁の継ぎ手位置まで)が最大値となる。
   
  □δ1=2.5〜5o程度の弾性範囲内の変位で有れば梁の持ち上がりは直線的なものであるとして、梁の持ち上がり起点はδ1とδ2の直線で延長した点とする。
  □δ1=10o以上の弾性範囲を超え、終局状態に近付くにつれて梁の持ち上がり起点は片持ち梁のたわみ曲線のように3次曲線的に持ち上がるとして、梁の浮き上がり起点は計測点1と計測点2の2点間距離とδ1とδ2から求まる3次曲線の原点とする。
   
   
  ・負担面積
 
  柱カウンターウェイトの負担面積のモデル化
   
  (2)浮き上がった柱を起点にX、Y両方向の梁の持ち上がった長さが放射状に広がった範囲が負担面積と考えられるが、モデル化に際してはさらに簡略化し、各方向の起点を結んだ3角形の面積を負担面積とした。
   
  □ここでは隅柱の持ち上がりに対して、梁の持ち上がり長さをモデル化し、さらに負担面積についてのモデル化を行った。
   
  側柱・内部柱についてはこの考え方を用い、側柱については持ち上げた柱に取り付く3方向の梁について梁の持ち上がり起点を求め、3点を結んだ面積を負担面積と考える。
  同様に内部柱については持ち上げた柱に取り付く4方向の梁について梁の持ち上がり起点を求め、4点を結んだ面積を負担面積と考える。
  以下実験の変位を用いて、上記のモデル化により得られた各柱の負担面積の結果を次項に添付する。
   
   
   
   
  3−3. 柱カウンターウェイトの負担面積算出法
   
  壁なしの場合の変位計1,変位計2,変位計3,変位計4の変位の測定結果を用いて、3.2の柱カウンターウェイトの負担面積のモデル化の考え方から測定番号No.1,No.2,No.9の柱カウンターウェイトの負担面積を求め、負担面積に含まれる床や壁などの重量から求めた柱カウンターウェイトの算定値と測定値との比較を行う。
  負担面積については以下の2通りより梁の持ち上がり起点を求め、起点を結んだ面積として算定している。
  1.梁が直線的に持ち上がると考えた場合
  2.梁が3次曲線的に持ち上がると考えた場合
   
   
  (1)ベランダ下部分の柱に取り付けた測定番号No.1,No.2の 柱カウンターウェイトの負担面積の考え方
  柱カウンターウェイトの負担面積の算定において、No.1,No.2では、梁が持ち上がるのは梁の継手位置までの長さということと、ベランダ部分のコンクリート床が一体となって持ち上がることを考慮して、梁の持ち上がり起点がベランダ床面積の一辺よりも長くなった場合には下図のように考えた。
  柱カウンターウェイトとして考慮できる負担面積はベランダ床面積全体までで、ベランダ床面積内に含まれる床や壁などの重量や、壁の曲げ剛性などが柱カウンターウェイトとなると考えた。
 
  ベランダ下部分の柱カウンターウェイトの負担面積の考え方
   
 
   
  □測定番号No.1の測定値と負担面積から求めた柱カウンターウェイトについての比較
  柱カウンターウェイトの負担面積については次ページ参照。
  下記に算定値と測定値の比較データを示す。
  ■下記の表の記号について
  L20、L30は変位計2(x方向梁)または変位計3(y方向梁)を取り付けた梁の持ち上がり起点と変位計1の測定位置との距離。
  Lx1、Ly1、Ly2は負担面積の一辺を示す。
 
  測定番号No.1の柱カウンターウェイト算定値と測定値の比較
 
 
   
   
  《測定番号No.1(隅柱の場合)の柱カウンターウェイトの負担面積の移り変わり(1)》
  −直線的に梁が持ち上がると考えた場合−
 
   
  《測定番号No.1(隅柱の場合)の柱カウンターウェイトの負担面積の移り変わり(2)》
  −3次曲線的に梁が持ち上がると考えた場合−
 
   
 
   
  □測定番号No.2の測定値と負担面積から求めた柱カウンターウェイトについての比較
  柱カウンターウェイトの負担面積については次ページ参照。
  下記に算定値と測定値の比較データを示す。
  ■下記の表の記号について
  L20、L40、L30は変位計2・変位計4(x方向梁)または変位計3(y方向梁)を取り付けた梁の持ち上がり起点と変位計1の測定位置とを結んだ長さ。
  Lx1、Lx2、Ly1、Ly2は負担面積の一辺を示す。
 
  測定番号No.2の柱カウンターウェイト算定値と測定値の比較
 
 
   
   
  《測定番号No.2(側柱の場合)の柱カウンターウェイトの負担面積の移り変わり(1)》
  −直線的に梁が持ち上がると考えた場合−
 
   
  《測定番号No.2(側柱の場合)の柱カウンターウェイトの負担面積の移り変わり(2)》
  −3次曲線的に梁が持ち上がると考えた場合−
 
   
   
   
   
  ●<たはら・まさる> 「木構造建築研究所 田原」主宰 HP: http://www4.kcn.ne.jp/~taharakn
大阪工業大学大学院 建築学科 客員教授
   
 
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