鬼塚電気工事 ZEB社屋に集った思い
 

鬼塚電気工事新社屋劇場

文/小林 健一

   
 
 
   
 

鬼塚電気工事新社屋劇場
2022年3月鬼塚電気工事の新社屋が完成しました。
建築設計から始まり、屋上緑化、オフィスレイアウト、インテリア、アート作品の配置、内部植栽、イベントの準備、ワークショップ、賞レースへの応募、、、かつてここまではじめから最後まで携わらせてもらった案件はありませんでした。2021年の冬から始まった鬼塚電気工事新社屋プロジェクトは約1年半でしたが、私にとって濃密で生涯忘れることのない経験をさせてもらえたプロジェクトとなりました。ひとつひとつの出来事を今思い返してしてみると第八幕まである壮大な物語です。全体の概要を皆さんにお伝えするという意味で振り返ってみたいと思います。

   
 

第一幕 建築の計画
第二幕 屋上緑化の話
第三幕 内部の話 大分県産材
幕間
第四幕 アートの話
第五幕 内部植栽の話
第六幕 オープニングイベントの話
第七幕 竣工記念品の話
第八幕 賞レースの話

   
 
  第一幕 建築の計画
   
 

今回のプロジェクト、若杉親分に建築担当で平手さん、インテリア担当でコバが呼ばれるといういつもの3人組で臨みました。ただひとつ今までと違っていたのがコロナウィルスの感染者数が劇的に増え始めた、2021年2月にスタートしたということでした。いつもであれば大学に集まって、打合せし、バババッっと、やることを分担して解散!というところがZOOMでの打合せが中心となる点で勝手が違う始まりでした。
尾野社長からの相談はまだ建築の設計が固まっていない状態で、そこから社長の思い、『ZEB』、屋上緑化、地域防災などなどのやりたいことや与件を聞き、さらにスケジュールは4月に確認申請を出して5月中旬には着工したいということでした。うーん、いつもながらの時間の無い、なかなかの状況でした。なにしろ階段の位置もまだどこに配置するか迷っているという感じだったので、、、、
ここから怒涛のプラン作成です。若杉さんと平手さんがプラン考えて、小林が作図。同時にファサードのデザインや太陽光パネルをどう配置するかなど、3Dデータをつくり検証しました。毎週末ZOOM会議を行い、プランを出しては修正チェック、修正しては出すということを繰り返し、徐々にイメージとプランを固めていきました。建物の大枠と同時に内部のレイアウトや会議室などの個室のプランを固める必要があったため、若杉チームの方でどんどん間仕切りの設定をしていき建築の図面が追いつかない、建築図面を追い越してしまうという状況になっていました。建築設計担当の東九州設計工務の木島さんは勝手に壁のライン決められてしまって、たまったもんじゃないだろうな〜と、申し訳なく思いながらとにかく1日でも早く設計をFIXさせようと爆走していました。
しかも今回は『ZEB』認証を取得するために様々条件や計算などが複雑に絡みあうので建築設計はさらに難易度は高かったと思います。
この辺りは木島さんのページをご覧ください。
こうして何とか4月の確認申請を出すというスケジュールに間に合い、着工の段取りへと進むことができました。

   
 
  平手さんの初期スケッチ
   
 
  第二幕 屋上緑化の話
   
 

屋上緑化の話はゴバイミドリの宮田さんのページに意図や思いが細やかに書かれているのでお読みください。なので、少しだけ書かせてもらいます。
今回の建物の特徴のひとつに屋上緑化があります。そこで若杉さんからゴバイミドリさんを推薦しました。ゴバイミドリさんの屋上緑化の思いや技術はすばらしく尾野社長はすっかり気に入り、一緒にやりたいと言っていただいたのですが、一方で地元に昔からの付き合いある造園屋さんがあり、そこと一緒にできないかという話になりました。造園屋の社長と宮田さんを小林が間に入ってつなぎ始めましたが東京と大分という距離もあり、なかなかうまく話が進みませんで。最終的に若杉親分と宮田さんに大分まで行ってもらい3者での打合せを行い、やっと役割を明確にしてなんとか協業するに至りました。
この件では小林はほとんど役に立たなかったです。。。

   
 
  第三幕 内部の話 大分県産材の活用
   
 

建物の骨格はおおよそ決まってきたので次は内部、インテリアや家具の話になります。
ここでの大きなお題は働く人が心地の良い空間、オフィスの木質化がしたいということと社員どうしの距離感を縮めたいということでしたが、建物は規模や耐震性などのためRC造になります、そこでインテリア(床、壁、天井)と家具で木質化をする方法としました。さらに地域貢献のために木材はできるだけ大分県産材使いたいという要望もありました。
とは言え、オフィス用の家具はスチールとメラミン化粧板でできているのが一般的で、会議テーブルなど一部で使われる程度です。若杉チームの出した回答は内田洋行の家具の上に大分県産材の杉の板を載せてしまおうという作戦でした。すぐさま内田洋行に連絡して主旨を説明して了承を取り、県産材の調達は大分分会長の志村製材三宮さんに連絡して「なんでもやります!!」という二つ返事をもらいました。三宮さんを巻き込んだので木材に関してはもう「鬼に金棒ならぬ杉棒」、もう安心です。
こうして、大分県産材をふんだんに使った大きなワンルームで、中央にはキッチンや打合せ、休憩もできるコミュケーションスペースが用意された見通しの良いオフィスが2階に、屋上庭園を臨む、多目的に使える会議室、カフェテリアのスペースが3階に生まれました。
ちなみにインテリアでは内装の制限がかかるため木材の使用は主に床の使用にとどめていますが、家具でこれだけ使うと木視率が上がりオフィスっぽくない、家に近いような、心地の良い空間になったのではないかと思います。

   
 
 
RC造でも木材を感じられる空間に    
   
 
  大分県産材をふんだんに使ったオフィス
   
 
  オフィスレイアウト図面(2F)
   
 
  オフィスレイアウト図面(3F)
   
 
  幕間 田中所長の話
   
 

建物も形になってきたので少し余談を書きたいと思います。
冒頭に書きましたがコロナ禍の自粛要請期間に進められていたため、現場の確認には行けたのは感染者数が落ち着いてきた10月でした。現場はほぼ建築躯体はできあがり、これから内装工事に入るという段階でした。現場訪問の目的のひとつはこれから始まる内装工事、造作家具工事のために現場の収まりや寸法が図面と齟齬が無いかの確認で、現場の打合せでひとつひとつチェックしていきました。その中で窓台に合わせて収納庫を収めたいので高さどうなっていますかね?と確認したところ、「ちょっと確認してきます!」と言って調べに行ってくれた人が清水建設の田中所長でした。「なんて、対応のいい人なんだ。。。」というのが第一印象です。その後も現場を丁寧に案内してもらい、細かな質問や面倒な相談にも嫌な顔一つせずに対応してくれました。施工に関しても、一部天井現しの部分のRCは「見えるのでものすごく気を使って施工しました!」と、並々ならぬ現場愛を感じたのをよーく覚えています。
コロナ禍という非常事態の中、多くの職人を束ね現場を指揮していく監督者はかなり苦労されたと思います。それにもかかわらず、東京のスギダラとか言う訳のわからない輩の質問や要望に真摯に丁寧に対応していただき田中所長には感謝をしかありません。
ありがとうございました。

   
 
  第四幕 アートの話
   
 

次のお題は新しいオフィスにアート作品を展示していきたいという話でした。
鬼塚電気工事は長年にわたりメセナ活動として地元作家の支援活動をし、その活動の中でいくつか作品を所有していたのです。所有する作品は大きさも大小さまざま、立体も平面もある個性的な作品ばかりでした。作品写真のリストをもらいましたが、どうにも判断できないので10月にようやく現場を確認しに行った時に現物を確認させてもらいました。想像以上に大きかったり、動く仕掛けがあったりなどさらに混迷してきてどうしようかと思い悩んだ末、パワープレイスの奥さんにアート作品のコーディネートをお願いするという手段をとりました。絶対的センスと安定感のある奥さんに頼めば一安心です。三宮さんに続き奥さんもこのプロジェクトに巻き込まれてきました。
アートのことは奥さんのページに詳しく書かれていますのでそちらもご覧ください。また、「大分の作家と言えば有馬くんと簀河原さんを忘れてはいけない!」と提案し、スギコダマとスギガキカウンターを今回のオフィスで採用してもらっています。
有馬さんのページもご覧ください。

   
 
  所有されていた様々な個性的な作品たち
   
 
  奥さんサポートによるアート作品の配置
   
 
  第五幕 内部植栽の話
   
 

尾野社長のオフィスへの思いはさらに深く、働く人にとって快適で、緑あふれる豊かなオフィスにしたいとう希望がありました。当然フェイクではなく本物のグリーンで「席についたらどこにいてもグリーンが見えるような感じで」というイメージを持っていました。アートに続いてこれは難題だぞ、まずグリーンのコーディネートと調達、設置をしてくれるところから探すところから始まり、さらに、グリーンの配置計画はアートの配置との関係を考慮し、全体と部分を見なければならないので一筋縄ではいかないのです。そこで奥さんがまたもや登場してもらい、奥さんに全体の植栽計画をお願いしました。一人二役、三役の大活躍です。植栽のお話は奥さんのページもご覧ください。
そして、オフィスが完成すると竣工のお祝いとしてたくさんの植栽が届きました。皆さんが新しい社屋の話を聞いて送っていただいたと思いますが、選んだ植栽がすっぽり埋もれるくらいの量でした。うれしい反面、悩ましいとみんなで顔を見合わせていました。

   
 
  お祝いであふれんばかりの植栽が届く
   
 
  第六幕 オープニングイベントの話
   
  いよいよオフィスは完成。オープニングイベントの一つとしてオフィスを作るのに関わったメンバーを招待した「若杉親分の講演会」をしようということになりました。と、同時に3階の有効活用の方法が今一つわからない。「どうしたら良いですか?」とう相談もあり、3階の使い方をその時の懇親会で実践して研修するということが、なんとイベントの1週間前にきまりました。それを一任されたのが奥さんと鬼塚電気工事の寶亀さんです。さあ、ここからが使える人はすべて巻き込んでの怒涛の準備です。当然コバも前入りしてイベントの準備をすることになりましたが、このエピソードの詳細も奥さんのページをご覧ください。
   
 
  第七幕 竣工記念品の話
   
 

オープニングイベントも終わり東京に戻った後に若杉チームで竣工祝いをどうするかという話になりした。現地では様々な記念品が届いている姿を見た後だけに、さてどうするか?ということで悩みます。植栽はないでしょう、、、時計?スギコダマ?どれも今一つです。そして「3階のイベントで使えるような屋台にしよう。しかも組立はワークショップで、自分たちで組立ててもらう。うん、賀来さんの屋台だ!しかも三ちゃんに大分県産材準備してもらって」となりました。いよいよ賀来さん登場です。5人目のスギダラメンバー。

材料は三宮さんに、現場のワークショップに賀来さんに講師として行ってもらう記念品と言うのか“イベント”を若杉チームでプレゼントすることになりました。

鬼塚電気工事でも快諾していただき、新入社員のみなさんに研修として組み立ててもらうということにしました。当日は賀来さんがモノづくりの考え方や道具の使い方などの講義から組立作業まで指導してもらう充実したワークショップで、無事に2台の屋台が出来上がりました。

と、あたかも、見てきたように書いていますが実はWSには行っておらす、段取り不足が多々あり賀来さんにはご迷惑掛けてしまいました。この場を借りて改めてお礼を申し上げます。賀来さんすみません!ありがとうございました!!

   
 
   
 
  第八幕 賞レースの話
   
 

プロジェクトの途中から完成したらグッドデザインに応募したいという話がありました。完成後いよいよ準備をするべくミーティングが再開。そしてその中でせっかく応募するならば、できるものはすべて応募しようということになり、グッドデザイン賞の他にウッドデザイン賞、日経ニューオフィス賞の合計3つに応募することになりました。実は賞によって評価ポイントや申請の内容が微妙に異なり、しかも締め切り時期が5月と6月に集中するため、同時進行、想像以上に大変な作業でしたがギリギリで何とか応募を完了しました。

グッドデザイン賞は1次審査を通過し、名古屋の会場でのプレゼンテーションブース展示も行いました。会場では数多ある巨大建築プロジェクトに囲まれ、いろいろと工夫をした展示をしましたが、結果は2 次審査で選に漏れるという形で終了しました。しかし、ウッドデザイン賞と日経ニューオフィス賞は受賞できました。本命を逃したのは残念ですが3戦2勝でまずまずの結果だったのはないかと思います。

   
 
 
グッドデザイン賞2次審査の展示    
   
 

こうして約1年半の濃密な鬼塚電気工事新社屋プロジェクトは完了し終幕を迎えました。 尾野社長の社員への愛、地域への愛、会社への愛の思いを真摯に受け止め、本気でしかも全力で愛を返す若杉チーム、スギダラチームの集大成とも言えるプロジェクトだったのではないかと思います。
そして、ここから鬼塚電気工事の新しい物語の始まりとなることを願っています。

以上です。

   
   
   
   
   
  ●<こばやし・けんいち> パワープレイス株式会社
   
 
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